THE 3RD CAMP

焚き火台が届いた翌日、仁王は箱を開けなかった。正確には、開ける必要がなかった。
十二月のキャンプまで、まだ三週間ある。今開けても仕方がない。
玄関の壁際に立てかけて、そのままにした。

二日後。箱を開けた。
別に我慢できなかったわけではない。中身を確認して、不良品だったら困るからだ。
床に説明書を広げる。組み立てる。
思っていたより簡単だった。

「……良い感じじゃ」

一人で呟いた。スマホを取り出して、買った焚き火台の横幅を確認する。次に一般的な薪のサイズを調べる。
そして関連商品を見る。
焚き火シート。火ばさみ。耐熱グローブ。風防。

「…………」

多い。焚き火一つするのに、なんでこんなに物がいる。必要最低限でいい。
そう思って画面を閉じた。

三日後。耐熱グローブが届いた。
十二月のキャンプ当日。白石が仁王を拾うため、車で仁王の家へ向かった。仁王の住んでいるマンションの外には予め仁王が荷物を運び出していた。

「仁王くん」
「なんじゃ」
「これ何?」
「焚き火台」
「買うたん?」
「買うた」

丸井が横から顔を出す。

「マジ?」
「うるさい」
「見せて!」
「なんでお前さんがテンション上がっとるんじゃ」
「だって焚き火台だろ? 今日それ使おうぜ」
「そのために持ってきたんじゃ」
「ハマってんじゃん」
「ハマっとらん」
「焚き火台買っておいて?」
「必要じゃろ」

白石が笑いながら、車に荷物を乗せていくが、他にも色々あることに気づいた。

「グローブもあるやん」
「熱いからのう」
「火ばさみも」
「薪つかむじゃろ」
「焚き火シート」
「地面焦がしたらいかん」
「完璧やん」
「普通じゃ」

丸井が仁王を見る。

「俺ら、前回まで白石の借りてたよな?自分用買ったんだ?」
「必要なもんじゃき」
「へえ」

丸井の顔が腹立つ。仁王は焚き火台の袋を丸井に押しつけた。

「運んびんしゃい」
「なんで俺が」
「使いたいんじゃろ」
「使いたい!」
「ほんなら働け」

その日の仁王は快適だった。新しいマットは地面の冷気をかなり遮断した。
シュラフも暖かい。椅子も自分のもの。マグもある。ランタンもある。
そして目の前では、自分の焚き火台で火が燃えている。

「…………」

いい。かなりいい。

「仁王」

丸井が呼ぶ。

「なんじゃ」
「顔。満足そう」
「気のせいじゃ」
「絶対満足してる」
「鍋食っとけ」

白石が笑う。

「仁王くん、次なんか欲しいもんある?」
「ない」

即答した。
本当にない。必要なものは揃った。もう十分だ。

「テントは?」

丸井が言った。

「いらん」
「即答」
「今使ってるので充分じゃき」
「でも仁王、こないだ『前室狭い』って言ってなかった?」
「まあ」
「あと『冬はスカート付きがええ』とか言うてへんかった?」

白石まで言う。仁王は黙った。

「……なんで覚えとるん」
「仁王くんが言うたから」
「テント見てんの?」
「見とらん」
「スカート付きって何?」

丸井が白石に聞く。

「テントの下の隙間から冷気入らんようにするやつ」
「へえ。仁王詳しいじゃん」
「白石も詳しいじゃろ」
「俺はまあキャンプしとったから」

逃げ道がない。
仁王は焚き火に薪を入れた。

「買わん」

誰も聞いていないのにそう言うから、丸井はつい笑ってしまった。

「何も言ってねーよ」